暖房の設定温度と費用の関係

検証

皆さん冬季の暖房の設定温度は何度にしていますか?

環境省の推奨では20℃となっていますが、実際私たちが使用する際に重要なのは、快適性と費用ですよね…

そこで今回は、建築環境工学の暖房デグリーデーという考え方を用いて、暖房の設定温度と費用の関係について考察してみようと思います!

暖房デグリーデーとは

暖房デグリーデーは、対象地域の寒さを表す指標です。

例えば、東京の1月の平均気温のグラフを見てみましょう。1月25日に注目すると、外気温は-2℃程度です。

暖房の設定温度を20℃、この日の平均外気温度が-2℃のとき、その温度差ΔT=20-(-2)=22℃となります。つまり、室温を22℃分上げるエネルギーが必要ということです。

もし、暖房の設定温度が22℃であれば、温度差ΔT=22-(-2)=24℃となりより多くのエネルギーが必要になります。

これを同様に他の日でも計算して、年間の値を合計することで暖房デグリーデーが計算でき、その数が大きいほど暖房エネルギーが必要になり、費用も高くなります。

一級建築士試験にも出てくるキーワードですので覚えておきましょう〇

Excelで暖房デグリーデーを計算

暖房デグリーデーの計算ステップ
  • Step1
    気温データのダウンロード

    気象庁の過去の気象データから日別平均気温をダウンロードする。

  • Step2
    暖房設定温度と平均気温の温度差を計算

    暖房設定温度を決定し、それぞれの日平均気温からの差ΔTを求めます。

  • Step3
    暖房デグリーデーを算出

    各日の温度差を合計し、その地域の暖房デグリーデーを計算する。

まずは気象庁の過去の気象データから、東京、大阪、札幌、那覇の4地域の2023年の日別平均気温をダウンロードしました。

必要のない列を削除し、データを整形します。

次にそれぞれの地域の日平均気温の隣に、暖房設定温度との差ΔTを計算する列を追加します。また、暖房設定温度も合わせて、記入する部分をL1セルに設けました。

ΔTを計算する関数は、暖房設定温度-日平均気温で、IF関数を使って0以下になる場合は0を返すように設定しています。

ΔT = =IF($L$1B2<0, 0, $L$1B2)
青色は暖房設定温度のセル、赤色は日平均気温のセル番号を選んでください。
$は、暖房設定温度の行列を固定する記号です。

ここまでで、C列、E列、G列、I列にそれぞれ温度差ΔTを求める事ができました。

あとはそれぞれの列の値を合計することで暖房デグリーデーが計算できます。

暖房デグリーデー(HDD) = SUM(C2:C366)
SUM関数の中に、ΔTの数値をすべて選択して入れてください。

算出した暖房デグリーデーを見てみるとこのようになります。やはり北から順に暖房デグリーデーの値は大きくなっており、北海道は本州の倍程度、沖縄に関しては温暖なため暖房があまり必要ではないことが読み取れます。

実は断熱性のを決める地域区分は、この暖房デグリーデーによって決められています。地域区分の基準は暖房設定温度18度で計算しています。この地域によって断熱性能の基準が決まるので非常に大事な考え方です。寒い地域と暖かい地域では、断熱性能の基準に2倍程度差がありますね。

(出典:経済産業省「経産省・建築物エネルギー消費性能基準等小委員会の審議 結果等について 」)を元に著者が作成

暖房費用の計算

1年間の暖房に必要な熱量[Wh] = U × A × HDD × 24
年間暖房費 = { U × A × HDD × 24 / COP } ×電気代
U:外皮平均熱貫流率、A:外皮表面積、HDD:暖房デグリーデー、COP:エアコンの成績係数

上記のような計算式を用いると年間で必要なエネルギーであったり暖房費用を概算することができます。今回は以下のような条件で設定しましたが、状況に合わせて数値を変更してもらえたらと思います。

○今回の条件
・外皮平均熱貫流率:上記の地域区分による基準UA値を使用
・外皮表面積:100m² (25平米程度の建物を想定)
・COP:3 (エアコンの性能、消費電力1kWあたり3kWの熱エネルギーを生成できる)
・電気料金:30 [円/kWh]

これらの条件を入力するセルをL3-5とH列に追加しました。

最後に暖房費用を計算します。

暖房費用 = M7*$L$2*L7*24/$L$3/1000*$L$4
先程の暖房費用の公式通り計算を行います。WをkWへ変換するため1000で除しています。

暖房設定温度と費用の関係

ここまでで作成したExcelファイルで暖房設定温度を変更すると自動的に暖房デグリーデーや暖房費用の計算をしてくれます。設定温度を18℃-24℃まで変更した際のグラフがこの様になりました。

やはり北海道が最も暖房費用がかかりますが、断熱性能が高いため案外東京や大阪と似たような結果になりました。

暖房費用は設定温度と比例関係が見られました。暖房設定温度が1℃上がると、費用は約10%程度ずつ上がっていくというのが結論として挙げられます。

22℃を超えると、北海道より、東京・大阪のほうが暖房費用が高くなる点が興味深いですね。

まとめ

今回は暖房デグリーデーの考え方を用いて、暖房の設定温度と費用の考察をしてみました。この計算はあくまで、1年間ずっと暖房をつけっぱなしにしたものであったり、窓や外皮をきちんと考慮できていないためあくまで計算上のスタディです。

ですが設定温度によって、試算上でもかなり費用が変わるということを意識すると、設定温度を見直すきっかけになりそうですね。

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