大阪万博の跡地はどうなる?カジノを含むリゾート計画の「本当のところ」

大阪万博

大阪万博の跡地が、カジノを含む巨大なリゾート施設に生まれ変わるという話、本当のところはどうなっているのでしょうか?このブログ記事では、大阪・関西万博の会場となる夢洲(ゆめしま)の未来について、計画の現状から、期待される経済効果、そして乗り越えるべき課題まで、分かりやすく解説します。

夢洲のこれからと大阪万博の役割

大阪万博の場所「夢洲」ってどんなところ?

2025年に大阪で開かれる万博の会場、夢洲(ゆめしま)は、海を埋め立てて作った人工の島です。万博が終わった後も、この島を世界中から人が集まる大きな観光地にしようと、大阪府と大阪市が計画を進めています。

万博の会場は、イベント期間中だけでなく、その後もずっと使えるように作られています。これは、次に作られる「統合型リゾート(IR)」という施設と深く関係しています。夢洲の開発は、IRを作ることで、街がもっと発展するための「きっかけ」になると考えられています。万博は、IRを作るために必要な交通の便を良くしたり、夢洲に世界の注目を集めたりする大切な役割を担っているのです。

なぜIR計画が注目されているの?

IR(統合型リゾート)とは、カジノだけでなく、国際会議場、展示場、大きなホテル、劇場、お店など、いろいろな施設が一つになった大きな観光施設のことです。日本では、2016年にIRを作るための法律が、2018年にはIRを実際に作るための法律ができ、特定の場所でカジノを含む施設を作ることが認められました。

大阪のIR計画は、国が初めて「作っていいよ」と認めた計画なので、日本全体でとても注目されています。大阪府と大阪市は、夢洲を「SMART RESORT CITY(スマート・リゾート・シティ)」という、新しい技術を取り入れた便利な街にしたいと考えています。これは、ただの観光地ではなく、ビジネスの場や新しい技術を試す場所としても夢洲を活用し、大阪が世界でさらに活躍できるようにする大きな戦略の一部です。過去の大きなイベントの跡地が、ただ残るだけでなく、新しい街の中心になることを目指している点が、これまでのやり方とは違うと言えるでしょう。

大阪IR計画の全体像:どこまで進んでいる?

国からの「お墨付き」は?

大阪IR計画は、実現に向けて大切な段階をクリアしました。2023年4月14日、国(国土交通大臣)は、大阪府と大阪市が夢洲に作ろうとしているIR計画を、日本で初めて「作っていいよ」と認めました。この計画は、国が作った専門の委員会で厳しく審査され、1000点満点中657.9点という高い評価を受けました。特に「地域にお金が回る効果」が評価されたそうです。岸田文雄首相も「2025年の大阪・関西万博の後、関西が発展し、日本が成長するのに役立つ」と期待を寄せており、国もこの計画を強く後押ししています。

IR施設には何ができるの?

大阪IRは、全部で約77万平方メートル、広さは約49ヘクタールという、とても大きな施設になる予定です。主な施設としては、カジノ(約6.5万平方メートル)、約2,500室のホテル、国際会議場、展示場、約3,500席の劇場、レストラン、お店などが含まれます。特に注目すべきは、IR施設全体の中でカジノの広さが3%未満に制限されていることです。これは、IRが単なるカジノではなく、いろいろな楽しみやビジネス、観光の機能が一緒になった施設として考えられていることを示しています。国際会議場は、最大6千人規模の会議や1.2万人規模のイベントに対応できるように設計されており、ビジネスの展示会から一般向けのイベントまで、幅広く使えるようになっています。

いつオープンするの?

大阪IRは、もともと2029年の秋から冬頃にオープンする予定でした。しかし、土地の引き渡しが遅れたり、工事のスケジュールを調整したりしたため、今は2030年前半のオープンが見込まれています。2024年10月には、大阪市からIRの会社に土地の93%が正式に引き渡され、工事に向けて大きく動き出しました。環境への影響を評価する書類も2024年6月14日から公開され、まもなく工事が始まる予定で、完成までには7年かかると見られています。

オープンが遅れると、最初にかかったお金を取り戻す時期や、IRがもたらすはずの経済効果が出る時期もずれてしまいます。これは、計画全体に影響を与える可能性があります。さらに、IRの契約には、2026年9月末までは、会社がペナルティなしで計画から撤退できる「解除権」というものが含まれています。この解除権があるということは、会社が夢洲の土地の問題(地盤沈下、液状化、土壌汚染など)や、その他の不確かなことに対して、まだ心配している証拠です。もしもの時に備えて、リスクを避けるための手段を用意している、と考えることもできます。この解除権は、土地の持ち主である大阪市が土壌汚染対策の費用を負担すること(後で詳しく説明します)と合わせて、事業のリスクの一部が、私たち市民の税金でまかなわれる可能性があることを示しています。過去の大きな開発で計画が変わったり、途中でやめたりした例と比べると、この解除権は、予期せぬ事態に対応できる柔軟性がある一方で、公共の事業として本当に安定しているのか、市民の負担はどうなるのか、という点で、長く続く心配の種になるかもしれません。

お金はどこから来るの?

大阪IRを作るのにかかる最初のお金は、約1兆800億円から1兆2,700億円(税抜き)とされています。この金額に幅があるのは、プロジェクトの規模や費用の見積もりがまだはっきりしない部分があるためです。内訳としては、建物を建てる費用が約7,800億円から9,600億円、その他の費用が約3,000億円から3,100億円です。

お金は、会社が出すお金と、銀行から借りるお金でまかなわれます。会社が出すお金は約5,300億円から7,400億円で、アメリカの大手カジノ会社MGMリゾーツ・インターナショナルと日本のオリックス株式会社がそれぞれ約40%から41%を出し、残りを他の小さな会社が出す計画です。銀行から借りるお金は約5,300億円から5,500億円で、三菱UFJ銀行や三井住友銀行などのグループが貸し出す予定です。

年間で約5,200億円の売上を見込んでいますが、そのうちカジノからの売上が約4,200億円と、全体の約80%を占める計画です。このようにカジノの売上に大きく頼っているため、IRが経済的に安定するかどうか、少し心配な点もあります。実際、審査委員会からも「カジノの利益を使ってIR施設を良くしたり、他の事業の内容を充実させたりすること」が求められており、このカジノへの依存度が高いことが公式に心配されていることがわかります。シンガポールなどの他のIRでは、カジノ以外の施設からの売上の割合を増やすことで、リスクを分散しています。これと比べると、大阪IRの売上の仕組みは、将来の市場の変化やギャンブルのルールが厳しくなった場合に影響を受けやすい可能性があります。これは、IRが「いろいろな施設が一緒になったリゾート」という本来の目的と、実際の売上の仕組みとの間に少しズレがあることを示していると言えるでしょう。

交通の便は良くなるの?

夢洲への交通アクセスは、2025年の大阪・関西万博に向けて大きく改善されています。大阪メトロ中央線は、コスモスクエア駅から夢洲駅まで線路が延びており、2024年度末に開通する予定です。道路も、此花大橋や夢舞大橋が6車線になったり、大きな交差点が立体交差になったりするなど、2022年12月までにほとんどの工事が終わっています。さらに、観光用の道路や高い橋の整備も2024年中に終わる予定です。将来的には、さらに鉄道の新しいルートや道路が整備され、夢洲へのアクセスがとても便利になることが期待されています。

大阪IR計画の主な数字

項目内容
最初にかかるお金約1兆800億円~1兆2,700億円(税抜き)
年間売上見込み約5,200億円
うちカジノからの売上約4,200億円(約80%)
うちカジノ以外からの売上約1,000億円(約20%)
主な施設カジノ(約6.5万㎡)、ホテル(約2,500室)、国際会議場、展示場、劇場(約3,500席)、レストラン、お店など
主な出資会社MGMリゾーツ・インターナショナル(約40-41%)、オリックス株式会社(約40-41%)、その他の会社(約17-20%)
オープン予定時期2030年前半(もともと2029年秋~冬頃から遅れ)

大阪IRがもたらす良いこと:経済効果と街の元気

お金が回る効果と仕事が増える効果

大阪IR計画は、地域にお金が回る効果と、新しい仕事が生まれる効果について、国から特に高く評価されています。最初にかかる約1兆2,700億円のお金に対して、関西全体では、建設中に約1兆9,100億円、オープン後は年間約1兆1,400億円のお金が回ると計算されています。仕事が増える効果も大きく、関西全体で建設中に約14.0万人、オープン後は年間約9.3万人の仕事が生まれると期待されており、IR施設の中だけでも約1.5万人の仕事が見込まれています。IRに来る人が、IRの中で使うお金は年間約6,600億円と予想されており、これは地域経済に直接貢献することになります。

さらに、万博会場を作るための重機や材料、運送など、広い範囲で仕事が増えるだけでなく、地下鉄の延伸計画のような交通インフラの整備も、会場の外でも建設の需要や雇用を生み出し、周りのホテルやお店も活気づくと期待されています。

これらの数字は、IRが大阪の経済に短期間で大きな影響を与えることを示していますが、その効果が「カジノの売上に大きく頼っている」という状況の中で、長く続くのか、また、生まれる仕事がどのような「質」のものなのか(例えば、一時的な仕事や給料の低い仕事の割合)については、もっと詳しく見ていく必要があります。見た目は大きな数字ですが、その中身を考えることも大切です。過去の大きな開発で、特に地方の街で商業施設がうまくいかなかった例では、人口が減ったり、郊外に大きなショッピングセンターができたりして、お店の経営が難しくなるケースが指摘されています。大阪IRが国際会議場やスマートシティ化を進めるのは、カジノで人を集めるだけでなく、いろいろな方法でお金を稼ぎ、街の機能を強くしようとしているからです。これが、経済効果をどこまで長く続けられるか、その計画がどれだけ具体的なのかが、これから問われることになります。

国際会議場(MICE)で世界とつながる

IRは、カジノだけでなく、国際会議場や展示場などのMICE施設がとても大切な柱とされています。大阪・関西が得意な産業分野に関するMICE(会議、研修旅行、国際会議、展示会)を開くことで、国際的なビジネスの交流や新しいアイデアが生まれる場となり、観光客だけでなくビジネスで来る人も呼び込み、街の国際的な力を高めることが期待されています。これは、ただの遊びの施設にとどまらず、ビジネスや学問の交流の中心としての役割を担うものです。

スマートシティとしての夢洲

夢洲は、万博が終わった後もIRを中心に、観光、ビジネス、災害対策、環境の機能を合わせた街づくりが進められる予定です。再生可能エネルギーや、賢い防犯システムも導入が検討されており、「スマート観光都市」として発展することが期待されています。大阪府と大阪市は、「SMART RESORT CITY」という目標を掲げ、最新のスマート技術や街の管理方法によって、「安全・安心」「便利なサービス」「環境に優しい」街を作ろうとしています。

具体的には、データを使って交通量を予測したり、シャトルバスを自動運転にしたり、ドローンを使って工事をスムーズに進めたり、AI(人工知能)の画像分析で工事現場の安全を守ったりするなど、最新技術の導入が計画されています。これらのスマート技術は、街の運営を効率的にし、訪れる人の便利さを高めるのに役立つと考えられています。

市民の声:賛成意見

大阪にカジノができることについて、市民の間では賛成と反対の両方の意見があります。あるアンケート調査では、賛成が48.62%(246人)に対し、反対が51.38%(260人)と、意見がほぼ同じくらいに分かれていることがわかりました。しかし、賛成の理由としては「経済効果」(42.28%)と「地域が元気になる」(27.64%)が上位を占めており、経済的な良い影響への期待が大きいことがうかがえます。また、知事選挙や市長選挙の出口調査では、IR誘致に賛成する人が知事選で53%、市長選で55%と、いずれも反対を上回ったという報道もあり、ある程度の市民の支持があることが示されています。

大阪IRの主な良い点と心配な点

項目良い点(期待される効果)心配な点(起こりうるリスク)
経済効果建設中やオープン後に、とても大きなお金が地域に回り、仕事が増えるカジノの売上に大きく頼りすぎているため、経済的に不安定になるリスクがある
街の元気国際会議場(MICE)で世界とつながり、ビジネス交流や新しいアイデアが生まれるギャンブル依存症の人が増え、社会問題になる可能性がある
街の機能スマートシティ化で、安全・安心で便利なサービス、環境に優しい街になる周りの地域の治安が悪くなったり、悪い人が入ってきたりする心配がある
土地の使い方万博の跡地が、いろいろな機能を持つ国際的な観光地になる夢洲の土地の問題(土壌汚染、液状化、地盤沈下)があり、多額の税金が使われる
事業の安定性国が認めていて、大きな会社がお金を出しているので、事業が進みやすい会社が途中でやめられる「解除権」があり、計画が不安定になる可能性がある
透明性土地の値段の評価が不透明で、税金が使われる決め方が怪しいという声がある
環境SDGs(持続可能な開発目標)に貢献し、再生可能エネルギーを使う目標がある渡り鳥の住む場所が壊されたり、生き物の多様性が失われたりする心配がある

乗り越えるべき課題:IR計画の心配な点とリスク

土地の問題:土壌汚染、液状化、地盤沈下と対策費用

夢洲は1977年から、工事で出た土やゴミを捨てる場所として使われてきた埋立地です。そのため、常に地面が沈んだり、地震の時に地面が液状化したりする可能性があると指摘されています。専門家からは、高い建物を建てるのには向かない土地だという意見も出ています。

この土地の特別な事情から、土壌汚染対策の費用として、大阪市が約790億円を負担することが発表されています。この費用が「もともと決まっていた上限の788億円とは別枠」とされていることや、大阪市が事前に頼んだ4社の土地の値段の評価(不動産鑑定)のうち、3社の結果が全く同じだったことに疑問の声が上がっており、透明性が低いと心配されています。このような状況は、本来なら会社が負担すべきリスクの一部が、私たち市民の税金でまかなわれることを意味します。不動産鑑定の疑惑は、この税金負担の決め方が本当に公平で透明だったのか、市民の不信感を招く可能性があります。関西大学の専門家も「夢洲の地盤に問題があることを知らずにIRを誘致するのはおかしい。大阪市が788億円も負担する話が出ているのは甘かった」と指摘しており、計画の初期段階でのリスクの評価が甘かったと見ることができます。また、環境への影響を評価する項目に「地盤沈下(液状化)」を加えるべきだという住民の意見も出ています。

ギャンブル依存症対策と社会的な心配

IRを作ることで最も心配されていることの一つが、ギャンブル依存症の人が増えることです。これに対して、IRを作るための法律では、カジノに入れる回数を制限したり、マイナンバーカードなどで厳しく本人確認をしたり、日本人などからは6,000円の入場料を取ったり、本人や家族からの申し出で利用を制限したりするなどのルールが決められています。

シンガポールでは、IRができてから国が積極的に依存症対策を進めた結果、依存症の人の数が減った例がありますが、日本の入場料がシンガポールよりも少ないため、同じような効果があるかはまだわからないという指摘もあります。大阪府では、IR推進局が中心となって、今あるギャンブルも含めて依存症対策を考えており、予防、相談、治療の段階ごとに現状や課題を整理しています。これらの対策が本当に効果を発揮するかが、IRが社会に受け入れられるかどうかの大切なポイントになります。

治安が悪くなる心配と対策

IRが海外からの観光客を呼び込み、経済効果をもたらす一方で、ギャンブル依存症の増加とともに、治安が悪くなる心配も指摘されています。IR施設の中は厳重な警備が予定されていますが、周りの地域の治安をどう保つかが課題とされています。暴力団や闇金、売春、覚醒剤などが入り込むことを心配する声もあります。

これに対し、IRの会社は、防犯カメラでの監視、24時間365日体制の警備、マネー・ローンダリング(お金の不正な流れ)対策、反社会的勢力(暴力団など)の排除などに取り組むことになっています。これらの対策が、IRの周りの地域全体の治安をどこまで守れるかが注目されます。

環境への影響評価と住民の声

大阪IRの環境への影響を評価する書類は、2024年6月14日から公開が始まりました。この評価の過程で、住民からはいくつかの心配な点が挙げられています。特に、夢洲が東アジアからオーストラリアへ渡る鳥たちの通り道にあり、絶滅の危機にある鳥たちの大切な住処や子育ての場所になっているため、IR建設が野鳥たちの住む場所を壊してしまう恐れがあるという意見が強く出ています。また、国際的な目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」で掲げられた「30 by 30」目標(2030年までに陸と海の30%以上の生態系を守る)に逆行するという指摘もあります。

大阪市は、IRの会社に対して、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献、工事中の運送計画、緑を増やす計画、地球環境への配慮などを求めています。さらに、再生可能エネルギーを100%目指すべきだという意見や、環境影響評価の項目に「地盤沈下(液状化)」を加えるべきだという意見も出ています。大阪市が住民からの要望書に対して、回答を出すまでに8ヶ月もかかった例もあり、住民の意見への対応の速さや透明性も課題として挙げられます。

夢洲が渡り鳥の大切な住処であり、IR建設が生き物の多様性を壊す心配が、環境への影響評価で住民から指摘されている状況は、経済的な開発(IR誘致)と環境を守ること(生き物の多様性)の間に、はっきりとした難しい選択があることを示しています。国際的な環境目標がある中で、日本の大きな開発がそれに逆行しているという批判は、IRが世界からどう見られるか、そして長く続けられるかという点で、無視できない問題です。この問題は、単に地元の住民の反対運動にとどまらず、IRが掲げる「SDGs達成への貢献」という目標と、実際の行動が合っているのかが問われることになります。環境への配慮が足りなければ、IRのイメージや世界での魅力にも影響が出て、結果的に経済効果にも悪い影響を与える可能性があります。これは、今の街づくりにおいて、お金の利益だけでなく、環境・社会・会社の運営(ESG)の視点がとても大切であることを示しています。

会社が途中でやめるリスクと「解除権」

先ほども説明した通り、IRの契約には、2026年9月末までは、会社がペナルティなしで事業から撤退できる「解除権」というものが含まれています。この解除権は、地盤沈下、液状化、土壌汚染の対策など、夢洲の土地の問題が解決する見込みが立たない場合に、会社が事業から撤退できる条件の一つとされています。

過去には、IR計画が途中でうまくいかなくなったり、会社が撤退したりした例もあります。例えば、千葉市は、国への申請期間が短すぎて準備が間に合わなかったことや、台風の被害からの復興を優先する理由で、IR誘致を見送りました。また、アメリカの大手カジノ会社ラスベガス・サンズが日本市場から撤退した背景には、日本のIRの利益の仕組みが厳しかったという指摘もあります。これらの例は、大きなIRプロジェクトが、経済的、社会的、あるいは政治的な理由で中断したり中止になったりする可能性があることを示しており、大阪IR計画でも同じようなリスクがあることを知っておく必要があります。

万博跡地のIR以外の使い方とこれからの姿

夢洲の街づくり計画:IR以外の開発も

夢洲の街づくりは、IRを中心とした「第1期」だけでなく、万博の考え方を受け継ぐ「第2期」、そして長く滞在できるリゾートの「第3期」という3つの段階で計画されています。第2期(約60ヘクタール)は万博会場の跡地を使い、エンターテイメント、医療ツーリズム(医療目的の旅行)、スポーツツーリズム(スポーツ目的の旅行)の機能を充実させることを目指します。さらに、第3期(約40ヘクタール)では、将来的に長く滞在できるリゾート施設を作る構想があります。

エンターテイメントシティ、医療ツーリズム、スポーツツーリズムなど

万博が終わった後の夢洲は、IR施設に加えて、周りの緑地公園や水辺のエリアも整備される予定で、家族連れや海外からの観光客も楽しめる街づくりが進められます。具体的には、「エンターテイメントシティの創造」が掲げられており、劇場でのエンターテイメント、商業エリア、レストラン、公園や水辺の空間などのくつろぎの場所が主な施設になる見込みです。

また、大阪・関西万博のテーマである「未来社会の実験場」の考え方を受け継ぎ、空飛ぶクルマの実用化、自動運転での万博へのアクセス、未来の医療体験なども計画に含まれています。さらに、「する」「みる」「ささえる」スポーツを盛り上げたり、ワールドマスターズゲームズ2021関西の成果を受け継いだりすることも構想に含まれており、夢洲がいろいろな機能を持つ複合的な街の中心となることを目指しています。

過去の大きなイベント跡地の再開発から学ぶこと(成功と失敗)

大きなイベントの跡地を再開発したり、IRを作ったりすることには、国内外にさまざまな成功例と失敗例があり、そこから多くの教訓を学ぶことができます。

失敗例としては、日本の地方都市で、中心部の再開発で作った商業施設がうまくいかなかった例が挙げられます。これらの失敗の主な原因は、地域全体の人口が減ったり、郊外に大きなショッピングセンターができたりして、お店の経営が難しくなったり、公共交通機関の利用者が目標に届かなかったりすることです。また、街の規模に合わない商業施設を作ったり、最初のお金を出すことばかりに補助金が偏りすぎたりした結果、経営が苦しくなったり、破綻したりして、自治体が税金を投入せざるを得なくなるケースも報告されています。カジノ単体での開発の失敗例としては、アメリカのアトランティックシティの例があります。この街は、観光資源が少ない中でカジノに頼りすぎた結果、近くの州でカジノが解禁されて競争が激しくなり、多くのホテルが閉鎖に追い込まれました。これは、ギャンブルの収入に頼りすぎた経営の末路を示していると言えるでしょう。

一方、成功例としては、シドニーオリンピック公園の再開発が挙げられます。大会後、開発を一つにまとめて担当する組織を作り、スタジアムの観客席を減らしたり、オフィス街を作ったり(ビジネスパーク、大手銀行の本社誘致)、国際放送センターやプレスセンターをデジタル技術の拠点にしたり(ヒアイースト)、選手村を住宅にしたり(イーストビレッジ)するなど、いろいろな方法で跡地を活用しました。ロンドンオリンピックでも、メイン会場の周りにヨーロッパ最大級のショッピングモール「ウェストフィールド・ストラトフォードシティ」を開業させ、オフィスビル群「インターナショナル・クオーター」を整備しました。競技施設もプロスポーツチームのホームアリーナや地域の病院に作り変えられるなど、地域住民の生活に役立つように工夫されました。

日本の地方創生の例では、民間が中心となって古い長屋を直し、いろいろなお店を入れたり、役所と民間が協力して古い家や空きビルを活用したり、商店街が協力してイベントを開いたり、道の駅を中心にして人を集めたり、温泉とアートを組み合わせて街づくりをしたりするなど、成功している例があります。これらの成功例は、地域の資源を活かし、いろいろな人たちが協力した点が特徴です。

夢洲の街づくり計画で、IRだけでなく、エンターテイメント、医療ツーリズム、スポーツツーリズム、先端技術の実証など、いろいろなアプローチをしているのは、過去の大きなイベント跡地やカジノだけに頼った失敗例から学んだ教訓が活かされている可能性が高いと言えます。一つの機能に頼るリスクを避け、いろいろな魅力を作り出すことで、長く発展できることを目指す戦略と言えるでしょう。これは、IRがカジノだけでなく国際会議場やエンターテイメント施設を重視する理由とも一致します。シドニーやロンドンオリンピックの成功例が示すように、大きなイベントの跡地を再開発する際には、ただ施設を別の用途に使うだけでなく、新しい産業やビジネスの中心を作ったり、地域住民の生活に役立つようにしたり、そして長い目で街を管理していくことが成功の鍵となります。夢洲の計画がこれらの要素をどこまで具体的に、そして柔軟に実行できるかが、IR以外の開発がうまくいくかどうかを左右することになります。特に、人口が減っていく社会における地方都市の再開発の失敗例は、地域の状況に合わせた「身の丈に合った」開発の大切さを示しており、夢洲のような大きな開発でも、市場の需要と供給のバランスを常に考える必要があるでしょう。

大きなイベント跡地・IR開発の例から学ぶこと

事例どんな計画だったかうまくいった/いかなかった理由大阪IRへのヒント
シドニーオリンピック公園大会後、開発を一つにまとめ、スタジアムを直し、オフィス街やデジタル技術の拠点、住宅地など、いろいろな用途に再利用開発を一つにまとめたこと、いろいろな機能を持たせたこと、ビジネスや住む場所を作ったこと、長い目で街を管理したことただ施設を別の用途に使うだけでなく、新しい産業やビジネスの中心を作り、地域住民の生活に役立つようにすることが大切
ロンドンオリンピックメイン会場の周りに大きな商業施設やオフィスビルを作り、競技施設をプロスポーツチームのホームや地域の病院に作り変えた地域経済に良い影響を与えるように、商業やビジネスの機能を取り入れたこと、既存の施設と連携したこと、住民の生活に貢献したこといろいろな街の機能を取り入れ、地域社会に溶け込ませることが成功の鍵
アトランティックシティ (IR)カジノに頼りすぎた結果、競争が激しくなり、売上が悪化して多くのホテルが閉鎖し、衰退したカジノの売上に頼りすぎたこと、観光資源が少なかったこと、市場の変化に対応できなかったことカジノ以外の施設を強くし、いろいろな方法でお金を稼ぐことが必要。一つの機能に頼るリスクを避ける
日本の地方商業施設再開発人口減少、郊外への開発、公共交通機関の利用目標未達などにより、商業施設の経営が難しくなり、税金投入が必要になった例地域の状況に合わない大きな開発、市場の需要の読み間違い、補助金に頼りすぎたこと市場の需要と供給のバランスを常に考え、「身の丈に合った」開発計画と柔軟な運営が大切

夢洲の未来はどこへ向かうのか

大阪万博の跡地に作られるIR計画は、日本で初めて国に認められた大きなプロジェクトとして、実現に向けて着実に進んでいます。アメリカの大手カジノ会社MGMリゾーツ・インターナショナルなどが中心となり、大きなお金と交通インフラの整備を背景に、2030年前半のオープンを目指しています。これは、関西の経済を元気にし、世界での競争力を高め、新しい仕事を生み出すことへの大きな期待が寄せられているからです。

しかし、夢洲特有の土地の問題(土壌汚染、液状化、地盤沈下)とその対策費用、ギャンブル依存症や治安の悪化といった社会的な心配、そして会社が途中でやめられる「解除権」の存在は、依然として大きな課題として残されています。これらの課題にどう対応するかが、プロジェクトが最終的に成功するかどうかを左右すると言えるでしょう。特に、土地の問題で多額の税金が使われることや、土地の値段の評価が不透明なことに対する市民の不信感、そして環境への影響評価で指摘された生き物の多様性への影響は、IRが掲げる「SDGs達成への貢献」という目標と、実際の行動が合っているのかが問われる点です。

大阪府と大阪市は、万博をきっかけに夢洲を「SMART RESORT CITY」にするという目標を掲げ、IRに加えて、国際会議場、エンターテイメント、医療・スポーツツーリズム、先端技術の実証など、いろいろな機能を持つ国際的な観光地として、長期的な計画を描いています。この多角的な開発と、過去の国内外の成功・失敗例から学んだ教訓を活かした柔軟な運営が、夢洲が単なる「カジノリゾート」にとどまらず、本当に長く続く「未来の街」として発展するための鍵となります。

大阪・関西万博のテーマである「未来社会の実験場」は、IR計画にも深く関係しています。IRが単なる経済的な利益を追求する場所ではなく、環境問題、社会的な課題(依存症、治安)、先端技術の実証といった、いろいろな課題を解決するための「実験場」としての役割をどこまで果たせるかが、その本当の価値を問うことになります。特に、環境への影響評価で指摘された生き物の多様性への影響や、再生可能エネルギーの導入に関する住民の意見への具体的な対応は、IRが掲げる「持続可能なIR」がどこまで実現できるかを測る試金石となるでしょう。

このプロジェクトは、日本が直面している少子高齢化、地域の経済を元気にすること、国際的な競争力を高めることといった課題に対する一つの答えとして考えられています。夢洲IRの成功は、大阪の経済だけでなく、日本の街づくりや観光戦略、さらには社会的な課題を解決するモデルケースとなりえます。しかし、その過程で生まれる課題をどう乗り越え、市民の理解と協力を得ながら進められるかが、長く良い影響を残すための鍵を握っていると言えるでしょう。

タイトルとURLをコピーしました